エレカシブログ 俺の道

ロックバンド・エレファントカシマシ、宮本浩次ファンブログ

君は「四月の風(DEMO)」を聞かずに死ねるか。

もう10ヶ月前に発売された音源についてで申し訳ないんだけれど、でも本当にそう思うんです。

2013年6月に発売された『「ココロに花を」deluxe edition』のDisc2には未発表音源が沢山あり、「未発表音源」というフレーズを聴く度に「色んなアーティストもこんなやり方ばっかりだ、『未発表』『初公開』のインフレで、さほどインパクトもないや」とも思うんですが、けれども「四月の風(DEMO)」はどう考えても聞く価値があると思うんです。もう本当に「聞かずに死ねるか」のレベル。

パッケージング化された「四月の風」と聞き比べると、音は歪んでいたり、濁って聞こえる場所も合ったりして、どう考えても売り上げは「製品版・四月の風」の方が上だろうし、お蔵入りされてもしょうがないんだろうけれど、でもこのDEMOには恐らくは宮本浩次の当時の心象が素直すぎるほどに表れている気がする。

何かが起こりそうな気がする 毎日そんな気がしてる ああ うるせい人生さ そう今日も何かがきっとはじまってる
何だかじっとしてられない 誰かがどこかで待ってる ああ短い人生の中で 誰かが どこかで待ってる

このデモ音源Verを聞くと、当時の宮本は本当に毎日ワクワクして、色んな所で新しい誰かが待っている気がして、もう自身のハイテンションさに体中が耐えられなくなって疼いて身もだえしてるんじゃないか、そんなレコーディング風景、または宮本の日常が見えてくるような声。

何かいいことありそうさ そんないつもの口癖さえ きっと本当になるような気がする
何かいいことありそうさ つぶやき一つ残していこう きっと本当になるような気がする 四月の風

「ガストロンジャー」はよく革命の曲といわれますが、ある種この曲も革命の曲なんじゃないかと思うんです。数年前までひたすら厭世感漂う曲を歌っていた宮本浩次が、偽りでもなく本心でこんなに前向きな曲を歌っていて、歌詞も「笑う門には福来たる」を具現化したもので、そしてご存じのように結果も「悲しみの果て」と同時にヒットというハッピーな結末もついてくる。

最近「笑う門には福来たる」という諺は真理を突いているな、と思っていまして、ネガティブな言葉を吐いていても誰も喜ばないし、逆に周りの人は離れちゃったり嫌悪感を抱いちゃう一方で、そうするとますます幸せからは遠ざかっていって、思考もネガティブに(以下悪循環の繰り返し)。
逆に変に気負わずにポジティブな言動をしていると、周りの人にもその波動は伝わってきて、色んな人が集まってくるし、そうすると中には「いいこと」が混じっていたり。するとまたポジティブな言葉が出てきて、そうするとまた周りでいいことが起きるかも知れず、それを口にするとさらにいいことが(以下好循環の繰り返し)。

なんだか変な人生啓発のフレーズみたいですが(笑)、割と本気にそんなことを思うんです。別に無理矢理ポジティブに考える必要はないけれど、必要以上に物事を悲観的に見る必要は無いし、周りの人を妬んだり嫉妬したりしても、そりゃ誰もついてこなくなってしまう。何より毎日が本当に後ろ向きに、下向きになってしまう。

ならば少し思考の角度を変えて、楽観的に考えてみれば、いいことの一つも起こるんじゃないだろうか。

・・・「四月の風(DEMO)」の話だ。でもこの曲を聞いた多くの人が「前向きな気分」、言うなれば「心地いい追い風を受けるような気分」になったと思うんです。そして「悲しみの果て」と共にメジャー最前線に復帰。その後のヒットは皆様ご存じの通り。
この曲の歌詞がそのまま具体化したような展開で、まさに曲自体で自らの正当性・理論の正しさを証明する形になって、相当に痛快です。


当時の宮本浩次山崎洋一郎さんに「悲しみの果て」「四月の風」が両A面シングルになった経緯についてこう語っている。

「あのね、最初の第一弾で”悲しみの果て”をシングルにしたかったわけなんですよ。それでさ”四月の風”が凄い好きな人が事務所にて-でも俺嫌でボツにしようと思ってたんですよ。で、そこですごい面白かったのは、『”四月の風”がいいからシングルにしてくれ』って言われて-、で、俺は”悲しみの果て”つってて。そしたらプロデューサー入れるとかいうんで、『わかった、”四月の風”っていうのは一回捨てたようなもんだから、そういう意味も含めてプロデューサーとやって。で、『じゃあどうしても1曲目を”悲しみの果て”にしてくれ』って俺が言って、2曲目を”四月の風”にして、両方ともA面っていう風にして出したら、”四月の風”にタイアップ(東芝マルチメディア企業イメージコマーシャル)がついたんだよ。だからそういうやっぱみんなのエネルギーが1コのCDになったっていう。だからそういう意味で面白かったですけどね」

(初出 ロッキング・オン・ジャパン1997年3月号 『風に吹かれて』500頁)


そしてこのデモ版はバカみたいに力強い歌い方で、上に書いたような日々のワクワク感、新しい風が吹いている感がボーカルとサウンドと一体となっていて、個人的には「製品版・四月の風」よりもより気分を高揚させて、前向きに歩いていこう、そういう自分自身への誓いが胸に響いてきます。

また何より「製品版・四月の風」では消えている『何かいいことありそうさ』の二行部分の歌詞がDEMO版では残っていて、それだけでも「四月の風」のより深い真価が味わえると思います。


もしエレファントカシマシの「製品版・四月の風」が好きだという方で(殆どの方が好きだと思いますが)、まだこの「四月の風(DEMO)」を聞いたことがないということは、本当に是非、試聴だけでも。聞いて後悔することはないんじゃないか、と俺は変な確信を持っています。


(Amazonアソシエイト)


一応Amazonへのリンクを貼っていますが、(iTunes Storeでは配信されていません)大きなお店のレンタル屋さんにはあったりするようですし、とにかく一度触れてみることを強くオススメします。


http://tower.jp/item/tracks/3242105
上記のAmazonタワーレコード公式サイトでは45秒だけですが、試聴出来ます。


他の人はどう思うか知らないが、俺は死ぬ前にこの「四月の風(DEMO)」を聞くことが出来て良かった、と本気で思っている。