エレカシブログ 俺の道

ロックバンド・エレファントカシマシ、宮本浩次ファンブログ

「ガストロンジャー」と「ズレてる方がいい」は繋がっている。

2002年発行『bridge』Vol.36 宮本浩次インタビューより、聞き手は渋谷陽一さん。時期的には2000年に「good morning」を出して、2002年に「ライフ」を発売、「ライフツアー」終了直後。

渋谷さん (中略)ただやっぱり、今エレファントカシマシがすっごく難しいところに立ってるってことには変わりはなくて。今エレカシ並びに宮本くんが担っているテーマっていうのは、”ガストロンジャー”的なるものと、一連のヒット・ソングに代表される、優しいエレファントカシマシ的なるものと、これをどう両立させるか、あるいは合体させるかっていうことだと思うんですよ。その二面性(実は二面性じゃないんだけども、ただアウトプットとしては二面性に見えてしまう)この要素をどうオペレーションしていくか、これはものすごく難しいことだけども、ただこれをやらないと次のエレファントカシマシは見えてこないですよね。


宮本 はい。


渋谷さん だから僕は「ガストロンジャー」は諸手を挙げてすごく喜んで、もう大好きで、いまだにあれを聴くと興奮しますけれども。


宮本 そうですか(笑)。


渋谷さん ええ。ただあれだけではダメなんだっていうのも改めて思うんですよね。あれがある意味で今の苦境を招いたという言い方もできますよね。客を逃がしたっていう(笑)。


宮本 いやあ、逆のような感じもするんですよね、やっぱあのアルバム(「good morning」)は作ってよかったと思いますし。ただライヴにやっぱ一個ねえ、ヒントがあるんじゃないかって思うんですよね。この間の僕らのライヴの中に。


(中略)


渋谷さん 宮本くん的には、商業的な成果はどうあれ、自分としてはやらざるを得なかったっていう。


宮本 そういう感じはすごくありましたね。非常にテンション高かったですよ、自分の中とかその周りで。


僕は「ガストロンジャー」発売当時はエレカシのファンではなかったので、発売当時の状況などはよく分からない(但し、前の記事の檄文ポスターの「売り上げ五万枚」云々の記載には宮本の痛烈なる悔しさ、敗北感を感じる)。ただ、今になって客観的に見ると、「ガストロンジャー」を出したことによって、「悲しみの果て」「今宵の月のように」で掴んだファンを逃がしたってのは間違いないと思います。『センチなヒットソングを出してたエレカシが、訳分からない無茶苦茶ハードロック路線へ突き進んだ』ことによって「客を逃がした」(C)渋谷さん、なのは確かだと思う。


ただこれが長期的な視点、例えば今ぐらいの時期になって振り返れば、どう考えても「ガストロンジャー出しておいてよかった」「あれが基礎となって今のエレカシの輝きがある」とも思うんです。正直な話「ガストロンジャー」やアルバム「good morning」がヒットしないのは(結果論ではなく)エレカシ周辺の人たちや、それこそ当時のファンの方々はきっと感じていた。けれども宮本浩次としてはそういう商業的な要素は別として、出さざるを得なかった。むしろこの曲を出すためにロック・音楽をやってたんじゃないか、そのぐらいの勢いで相当な自信を持ってハチャメチャなナンバー「ガストロンジャー」発売。


周りからすれば「宮本先生、フツーにヒット曲出せばいいのに」となるけれど、宮本的にはその創作に対する衝動は到底抑えられるものではなかった。そして結果的には大ヒットには繋がらなかったけれど、「エレカシ宮本浩次は商業的にはどうあれ、自分の出す作品には絶対の自信と確信を持って、一本筋の通った曲を出す男」というイメージ・インパクトを世の中に植え付けたと思う。

そしてそんな「曲げられない男」宮本浩次が本当に信念曲げずに作りたい曲を作って、数多くの作品やレコード会社移籍等々を経て、「ガストロンジャー」から12年余り、干支を一回転させての「ズレてる方がいい」発売。


「ガストロンジャー」と「ズレてる方がいい」は曲の主張自体も似ていると思うんです。骨格が似通っていると言えばいいのか『世の中からすりゃ自分の考えがズレてるかもしれないが、正々堂々と世の中に立ち向かって、己を曲げずに、最終的には勝とうぜ、ご同輩』。そんな意味合いが二つの曲には込められていると思う。


そしてこれは「ズレてる方がいい」単体ならばここまで説得力が強くなかったかもしれない。けれどそこは12年ちょっと前に商業的な成果はどうあれ『これが俺の主張だ』と「ガストロンジャー」を出した男、宮本浩次エレファントカシマシが言うのならば相当に説得力が出てくる。それを世間が意識的か無意識的かは置いておいても、「あのエレカシ宮本が言うならば」とそんな受け取られ方をした感覚があります。


そしてこれらはさらに相乗効果を生むと思います。「ガストロンジャー」「ズレてる方がいい」で世間に対して唯一無二の主張をしたエレファントカシマシ。当たり障りない楽曲が溢れる中で、『どうだ』と言わんばかりの自信を持った上での戦闘宣言。数は少ないかもしれないけれど、きっと世間も「エレカシは気骨入った曲を出してくれる」と受け止めてくれれば、「Destiny」の次の曲だって「あのエレカシが今度はどんな曲をだすのか」と期待してくれるだろうし、世間のその期待以上の堂々とした筋の通った主張をすればさらに「さすがエレファントカシマシ」となる。そんな好循環を生むことを期待しています。


長々と書きましたが一行でまとめてしまえば「エレファントカシマシは『ガストロンジャー』と『ズレてる方がいい』で世間からの信頼を勝ち取った」となるんですが、誇張してるわけでもなく、興奮してるわけでもなく、本当にそう思います。


例え世間から見るとズレてたとしても、信念を曲げずに曲を世に出す男、宮本浩次エレファントカシマシの次の戦いに大いに期待したい。説得力の強さは四半世紀以上に渡る実績が証明している。




・・・この訳の分からない長文を全部読んでくれる人がいるかは疑問ですが、もう猛暑真っ盛りなので、少しは涼しげな写真でも撮ってアップしたいと思ってます。