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エレカシブログ 俺の道

ロックバンド・エレファントカシマシのファンブログ

どでかい「男」に憧れて 若い頃から生きてきた

昨年末に刊行された水道橋博士の単行本「藝人春秋」(文藝春秋刊)が圧倒的に面白いんです。


タイトルは「流れ星のやうな人生」より。博士とビートたけしさんとのエピソードを読む度、このフレーズが頭に浮かんできます。


今までの水道橋博士の本も基本的には「男」に焦点を当ててきたのですが、本作は徹底的に様々な「男」にフォーカスを当てている。
博士自身も芸人というポジションに身を置きながら、身の回りに現れるあらゆるジャンルの「ズレている男」に畏敬の念や好奇心を持って接して
文字通り血と汗が通うコミュニケーションの中から、博士が「これは!」と思ったフレーズや瞬間をルポライターとして文章に綴っている。


この本に出てくる男たちの生き様からは哀愁が漂ってくる。
それぞれの世界で成功して名声を得たり、お金を得たりしているんだけれど、それでもやっぱり飽き足らずに何かを求めて追いかけ回す。
成功している時期の間の豪快伝説や名言も面白いんですが、この本を繰り返し読んでいると、登場人物の成功の後にある
「俺の人生こんなものなのかよ、もっと上に行けるはずだ、もっと格好よく生きることが出来るはずだ」的な飽くなき欲望。
そしてその男たちがスポットライトを浴びた後の残像、舞台を降りて家に帰るまでの背中に漂う哀愁が頭の中にイメージされる。
みんな自分の欲望に忠実で「自分の世界でトップに立ちたい」と生き急ぐように全速力で人生を駆け抜けて、でも世間からズレたり、体力的に衰えていったり
それこそ自らの死が近くなるのを自覚するようになり、どこか自分自身を客観視したり、達観したりする。
そこには成功したはずなのに「こんなもんじゃなかった」という男の哀愁が漂っている。その背中は寂しいけれど格好いい。
そして登場人物でもエネルギーある人は「まだまだ行けるだろう」と全速力で走り続けている。


博士の周りで蠢いている、そんな不器用な男たちについての渾身のルポタージュだと思います。


登場人物の、あまり表に出ない、逆に言うと同じ世界に身を置く博士だからこそ垣間見えて文章にすることが出来る素顔も面白い。
例えば石倉三郎さんがこんな男気を持った人だったなんて失礼ながら全く知らなかった。
ポール牧さんがこういう人生の閉じ方をしていたとは知らなかった。稲川淳二さんがこういう大きいものを背負って歩いているとは思わなかった。
児玉清さんがここまで味のある俳優さんで、真っ直ぐでダンディな方だとは知らなかった。
(児玉さんの部分を読んだ後、思わず家に保管しておいた『龍馬伝』の児玉さんのラストシーンを慌てて探して見てしまった)。


本書にはロック歌手として唯一甲本ヒロトさんも出てますが、こちらもクソ格好いい。
(スズキくんとのエピソード、そして「十四才」の話は読みながら思わず涙してしまう)。


「あとがき」で水道橋博士は次のように書いている。

『出会いに照れるな』。
もともと極度な人見知りであるボクは芸人になってから何度この言葉を言い聞かせてきたか。
一見、大人が子供のようにふざけているように見えるが、バラエティの裏側はリアルな大河ドラマであり
見知らぬ他人同士が寄せ場に集い一期一会の繰り返しが寄せ来る波のように続く。

あらゆる人に会っている博士が実は極度な人見知りというのは、前に博士の本で知っていたのですが、宮本浩次との「ゲストとゲスト」でのナマ汗を見ながら
「あ、ほんっとに人見知りなんだ」と再認識したのですが、この「出会いに照れるな」は僕自身も自分に言い聞かせてます。
確かに知らない人に会うのは緊張したり時に苦痛だったりするんだろうけれど、出会いさえ乗り越えられれば、新たな感動が生まれるんじゃないかというのは
博士の本を読んでるとリアルに実感できる格言なんだと思います。
「ゲストとゲスト」収録までの博士の日記を今見返すだけでもこっちが手に汗握る展開。きっと博士はこれを何度も繰り返しているんだろう)。


いつか博士にはルポタージュとして宮本浩次についても書いて貰いたい。


甲本ヒロトさんとエレカシ、両方のプロデューサーを務めた佐久間正英さんの二人についての評を読むと、そりゃ違いはあれどロック歌手としての熱い熱を感じる。

−−あとはエレカシですよね。
佐久間:エレカシは大変ですよねやっぱり。
−−テレビで宮本さんなんか見てるとすごそうな人ですよね (笑)
佐久間:しゃべり方からなにからあのまんまですよ (笑)
−−BLUE HEARTSのヒロトと通じるようなところはありますか?
佐久間:ヒロトの方が全然クールで普段は普通ですね。普段のヒロトって非常に良い人ですね。エレカシの宮本君はないですね、あのキャラは。
いつでもやばいですね (笑) 彼はやっぱり歌すごいですね。スタジオで聴いてて感動しますね。


2010年12月14日付 佐久間正英さんのインタビューより
http://www.musicman-net.com/sp/relay/06-6.html

先生やっぱりスタジオでもあのまんまなんですね(笑)。
ただいつだって全力投球で、成功しても失敗しても何かに飽き足らずに走り続けて、背中から哀愁という点では「藝人春秋」に登場する男たちとの
共通点が沢山あると思います。是非数々の男をルポしてきた水道橋博士に、テレビというお互いに少し重なるフィールドから見た宮本浩次を書いて貰いたいです。


「藝人春秋」は表紙からしてやや怖いですが、笑って泣けるクソ熱い名著だと思います。是非。


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