エレカシブログ 俺の道

ロックバンド・エレファントカシマシ、宮本浩次ファンブログ

宮本浩次「MASTERPIECE」全曲解説 by bridge vol.72

しかしロッキング・オンではbridgeでは御大・渋谷陽一さん、rockin'on JAPANでは熱血男・山崎洋一郎さんしか
インタビュアーにならないですよね。ブログでは宮本の写真よく載せるし、二人とも宮本好きすぎですよ(笑)。
社内でも「エレカシ宮本ならあの二人」ってのが暗黙の了解的にあるんでしょうか。
そりゃ社長と「JAPAN」の総編集長ですしね。



渋谷陽一さんのブログを見てもインタビューの日にちははっきりしませんが
(「エレカシ宮本、熱く語る」「エレカシ宮本、タバコを吸う」はどちらもテレビ版の模様)
発行時期や内容などから、リリース後、ツアー後ぐらいかと思われます。
なので宮本もある程度冷静に、また俯瞰的客観的に自分の作品を見ているようです。


以下、渋谷陽一さんは「渋」、宮本浩次は「宮」で。

渋「まず"我が祈り"、<全てを手に入れるのがルールさ/いくつもある勝利への道筋なら
  魂の中本当の自分を見つけろ>っていう。実は宮本くんはこういう人生を歩んできましたよね」
宮「はい(笑)、あの、手に入れたかったんですけど、当然足りてないっていうか。
  ただ、手に入れるっていうのも、いろんな見方があるんですけど、物事って。
  もう実は手に入れてたりもしてるわけですよ。
  たとえば"七色の虹の橋"って曲で、恋人と古本屋で昔待ち合わせしてて、その瞬間を振り返ると
  なんてことないようで実はすごい時だったって感じることができたりする(後略)」

「七色の虹の橋」聞く度に思うんですが、待ち合わせ場所を古本屋にしたのは絶対先生だろうと(笑)。
真面目な話、宮本浩次は良い意味で欲深いんだと思います、常に勝ちたい、上を目指したい。
ライブや取材で「シングルを720万枚ぐらい売りたい」「50億ぐらい稼ぎたい」、結構それは本心で
でも簡単には上手くいかずに負けちゃう、でも時間を経ればまた「勝ちに行く」ってことで前へ進む。
その勝ち負けや浮き沈みの繰り返しがエレカシの歴史なんじゃないかなと思ったりもします。壮絶な歩みだ。

渋「"大地のシンフォニー"も同じことが歌われていて、これは手紙が届くわけですよね。
  友達からでも誰からでもいいんだけど、<孤独な心に届いたその手紙/「つつがなくやっているぜ、相変わらずだけど」>
  っていう、幸せって書いてある訳でもない、なんか特別に事業が成功したとか、ものすごいきれいなカミさんを
  もらったわけでもない。でもこの日常のメッセージが、大地のシンフォニーなんだよ。
  と同時に、宮本くんは考えるわけなんだよね、<演じてきたんだろう?似合わない役わりを>って。
  ひょっとしたら似合わない自分を演じてきたのかなあという思いも交錯するわけだよね」。
宮「まあ、そうっすねえ、なんかしらやんなきゃしょうがないんで」
渋「(笑)なんだよそれ」(後略)

毛色やテンション、アレンジ等々は全く違うんですが、初期の「花男」から「ガストロンジャー」
「俺たちの明日」、そして「大地のシンフォニー」まで根幹は違えど「男と男」「オマエはどうだ?」
「お互い行けるところまで行って勝とうぜ」みたいなテーゼがあると思うんです。
それで一方で「Darling」「七色の虹の橋」のように「男と女」というテーマもあって。
さらに宮本は46歳になって経験も積んできて、過去を振り返って、今があって、未来があって。
そういう男女問題やら友情やら四十代半ばの男から見た過去現在未来等々の散らばったあらゆる『点』が
今の宮本(エレカシ)の絶好調ハイテンション状態で良い具合に『面」になってMASTERPIECEが出来たんじゃないか。
アルバム聞いててインタビューを読んでいると、そんなことを思ったりします。

渋「"ココロをノックしてくれ"は、同じテーマではあるんですけれどもまたちょっと角度が違うというか」。
宮「これもアルバムのわりと後半のほうに作った曲で。ピアノで最初作って、まあピアノつっても僕ヤマハ
  音楽教室を三ヶ月でクビ、『やめて下さい』って言われたことがあるんで」
渋「なんだよ、「やめて下さい」って(笑)」
宮「『奴隷天国』ってアルバムん時にそのアルバムを先生に聴かせちゃったのがいけないみたいで
  それから『もう来ないで下さい』みたいな、『ちょっとこの人ヤだ』みたいな(笑)、怒られちゃって」
 (中略)
  たとえば僕なんか前日ヤなことがあっても一晩寝ると意外に元気になっちゃったりとかして。
  夢の中でもなんでもいいんですけど、みんな眠りについて、疲れて休んでる街の中には
  きっと、悲しいことやいろんな思い、いがみ合ってる恋人同士の喧嘩の声とか、昼間うまくいった商人の
  ずる賢い満面の笑みとか、そういうものも含めてなんか残像のように<宝石の思いの数々>が同時にいっぱい
  ちりばめられてて、星と一緒に。で、たとえば恋人とヨーロッパの古い道をね、木漏れ日の中でゆっくり
  歩こうぜって約束したかもしれない、それは実現できてなくたって、たくさん夢の欠片がいっつも
  胸に溢れてるんじゃないか、そうだろって。ってこういうふううに言いたかったんですね、この歌では」

前半の「ヤマハのピアノ教室クビになった」ってのは「明日に向かって歩け」で書いていて、今作のインタビューでも
あちこちで話しているんですが、確かに教え子がCD持ってきて一発目「奴隷天国」で「あくびして死ね」と歌ってたら
そりゃ先生も怖がっちゃうのも分かる気がします(笑)。
ただ同アルバムラストの「寒き夜」なんかは哀愁漂う男の姿が出ていて、今聴くとピアノが合うんじゃないかと
思ったりもします。
後半の「様々な街の想い」は凄くよく分かる。というか僕も例えば夜中に首都高や夜の道路で街の風景を見てると
全く同じ様なことを考える。街の明かりはいつもと変わらなくてキレイだけれど、住んでいる人は嬉しかったり
悩んだり苦しかったり、眠れなかったり眠ってたり、夢を見ていたり、明日への期待を胸にしてたり。
それで東京というのは人口が過密しすぎているので、そういう人の想いが世界で一番ぐらいに凝縮されている
街並みなんだろうな、とか色々考えるんですけど、周りの人に聞いてもそんなことを考えてる人は誰も居ない(笑)。


まあだから好きなアーティストが同じ様な感覚というか、同じ様なことを考えていると思うとまた嬉しいんです。
(同じ様なことを考えているからエレカシが好きになったのかもしれませんけど、そこら辺は直感で行きましょう)。

渋「"穴があったら入いりたい"って、笑えるよね、すごいいい曲だよね」。
宮「ああ、ありがとうございます。これ好きで<穴があったら入いりたい>っていうフレーズを最初から
  ずう〜っと歌ってたんです、去年の一月から。
  これはうまくいけばシングルに出来たらいいなっていうふうに思ってたんですね、そん時は。
  たぶん"ワインディングロード"とかと同じぐらいにそのフレーズはもうできてて。
  <目覚めろ Goodday/しけた Monday>とかっていうのは最近つけたフレーズで」

相当前から考えられていたようで、プリプロとかでもずっと口ずさんできたのがなんとなくイメージできます。
『目覚めろ Goodday』からの流れは相当に好きで、これを頭に来るように曲を編集して目覚ましの曲にしてます(笑)。
MASTERPIECE発売当時から大好きなんですが、未だ好き、寧ろ逆に好きさの深度が増してる自分が居ます。
サビの一週間の流れはそれこそ「ウコンの力」のようにドリンク剤のCMソングとしても行けるんじゃないかと思います。


「穴があったら入いりたい」から猛烈な爽快感とパワーを感じる件
http://d.hatena.ne.jp/mpdstyle/20120601/p1

渋「で、最後に"飛べない俺"っていう、ある意味このアルバムのテーマと同じという言い方もできるし
  でもそのテーマを踏まえて「でも飛べない俺がいる」っていう、もうひとつ踏み込んだ歌っていう
  言い方もできるし、いろんな解釈の出居る曲が最後に出てきますね」
宮「ありがとうございます。これはピアノとギターでやってるデモテープみたいなのがあって
  拙いんですけど、自分で言うのもなんなんですけど、非常に透明感があったんですね。
  "〜伝統のマスター馬鹿"は僕はオジサンの気持ちで歌ってたんですけど、こっちは男の子じゃないですけど
  やっぱそういう透明感のある姿っていうか。(後略)」

ヒーローを目指す子どものような純粋な気持ちと、でもどこかで「そりゃ飛べないし」と達観する46歳の姿。
「でも負けるわけにゃいかない」「まだ勝ちに行こうぜ」と前を向く男の姿。
アルバムのラストに全曲の総括だけれどもなにか余韻、寸止めのような伸びしろのある曲が入ってるので
「まだエレカシはこれからだ」と早くも次の曲への期待を抱く。


台風と街と「飛べない俺」
http://d.hatena.ne.jp/mpdstyle/20120620/p1

宮「渋谷さん、ここの<いつか大人になってた俺が>ってねえ、月の夜に酔っ払って帰ってきた時に
  男の人歌うと気持ちいいと思うんですよね。
  <確かに感じる 輝く瞬間(とき)を/そうさ俺は今生きている>、歌わねえかなあ、誰か(笑)」

このbridgeは本屋さんで買った後に電車の中で読んでたのですが、この部分で思わず笑ってしまった。
「我が祈りは歌ったことはないけれど、酔っ払って『穴があったら入いりたい』はよく歌ってる」と(笑)。
『目覚めろ Goodday!』から『はじけろ Friday!』『全部ばれてるぜご同輩!』『表通りだけが人生じゃないだろうが』。
これは本当に口ずさみたくなるようなリズミカルかつハッピーな曲なので、酔っ払っては小声で歌ってます。
逆に「飛べない俺」は前に書いたような、街を見下ろすような場所、しみじみ出来る場所で「脳内で」口ずさんでます。

宮「何かすごいことをやり遂げた人とか、そういうので肯定するんじゃなくて、生きていることそのものから
  生きていること自体肯定できた。
  だからファンの人のことももちろん信じてはいたんだけれども、より信じられるっていうか。
  ファンの人に限らないんだけれども、自分も含めて生きてる人、生きてるっていうことを
  自分がロック歌手でミュージシャンで音にできた、言葉にできたこのアルバムはすごく大事なものになりました」

このインタビューはPAOかと思うくらいにアルバム一曲一曲について語っていて、また最初に書いたように
レコーディング直後のようなハイテンションではなく、少し俯瞰的に作品や己を振り返っているようで
今までの人生や曲収録当時の印象、そして御大・渋谷陽一さんとの会話で生まれてくる新しい発見が詰め込まれていて
オススメです。前に書いた「GOOD ROCK!」とこのbridge、そして恐らくツアーについて振り返るであろう
次回のPAOの三つが揃えば、MASTERPIECEとMASTERPIECEツアーについての概略は分かるんじゃないかと勝手に思っています。


(Amazonアソシエイト)


ちょっと前にコメント欄に書かれていたロッキング・オン刊、宮本浩次著の「東京の空」入手方法ですが
ロッキング・オンでも在庫がなく、重版の予定もなく、各書店での在庫もないため、現時点で定価にて
新品を手に入れるのは難しいようです。
ただヤフオクAmazonマーケットプレイスで高いお金を出すのもどうかと思うので、時間があれば
「宮本書籍三部作(明日に向かって歩け、風に吹かれて、東京の空)をいかにして手に入れるか」みたいなことを
まとめて書きたいと思います。それこそ「我が祈り」じゃないですけど「全てを手に入れるのがルールさ」です。




こちらは「お茶の水の空」。